いなせ(鯔背)
最近の日常生活の中ではあまり耳にすることのない言葉です。
「いなせ」は漢字で「鯔背」と書きますが、こちらもあまり目にすることはないでしょう。
時代劇などで使われているのを聞いたことがあるかもしれません。
この記事では「いなせ」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
いなせの意味
いなせには次の意味があります。
・粋で威勢がよく、さっぱりとして男らしいさまや、そのような気風。(出典:大辞林 第三版)
江戸時代、江戸日本橋魚河岸の若者が、髪を鯔背銀杏(いなせいちよう)という髪型に結っていたことから、若い男性の気風を形容するようになりました。
「鯔(いな)」というのは魚のボラのこと。ボラはいわゆる出世魚で、成長とともに名前が変わり、イナが成長するとボラに。
鯔背銀杏は、ボラの背のように髷(まげ)の先をはねあげたスタイルともいわれています。
使い方・例文
・ 虎蔵君と並んで立っているのは二十五、六の背の高い、いなせな唐桟ずくめの男である。
(出典:夏目漱石『吾輩は猫である』)
・だから露柴には我々にない、どこかいなせな風格があった。
(出典:芥川竜之介『魚河岸』)
・さびのあるいなせな声で、さっきから、すっかりもうご機嫌の、石初の隠居である。
(出典:安藤鶴夫『巷談 本牧亭』)
・いなせな恰好をした男ぶりのいい若い男だったが、その男はならず者だった
(出典:藤沢周平『三屋清左衛門残日録』)
・手拭を肩へいなせに掛けて出ますが、その手拭を途中で落としてしまったんです。
(出典:尾上松緑『松緑芸話』)
・いなせな拵えを自慢にしていた清さんも年をとったものだ。
(出典:青島幸男『人間万事塞翁が丙午』)