撞着
「話の前後が撞着する」などのように使う「撞着」という言葉。
「撞着」は、音読みで「どうちゃく」と読みます。
「撞着」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「撞着」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
撞着の意味
「撞着」には次の二つの意味があります。
1 つきあたること。二つのことが互いにぶつかること。
2 前と後とでくいちがって、つじつまが合わないこと。(出典:日本国語大辞典)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
撞着の意味①「つきあたること。二つのことが互いにぶつかること。」
撞着の一つ目の意味は「つきあたること。二つのことが互いにぶつかること。」です。
言い換えれば、「食い違う、すれ違う」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・むしろこのような撞着した立場に立つことへの深い悲しみだけがあったはずである。(出典:石原吉郎『望郷と海』)
・それを引っ繰り返して見ているうちに、サフランと云う語に撞着した。(出典:森鴎外『サフラン』)
・生物学では夫は生気説に撞着するし、物理学では不決定論に対立して了う。(出典:戸坂潤『現代哲学講話』)
・次に粋道と恋愛と相撞着すべき点は、粋の双愛的ならざる事なり。(出典:北村透谷『粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ』)
類語
・対立(たいりつ)
意味:二つのものが反対の立場に立つこと。(出典:デジタル大辞泉)
・衝突(しょうとつ)
意味:立場、意見などの相反するものどうしが、言論や腕力・武力で争い合うこと。(出典:日本国語大辞典)
・行き違い(いきちがい)
意味:意志がうまく通じないで、くい違いを生じること。(出典:デジタル大辞泉)
・齟齬(そご)
意味:物事がうまくかみ合わないこと。(出典:デジタル大辞泉)
撞着の意味②「前と後とでくいちがって、つじつまが合わないこと。」
「撞着」の二つ目の意味は「前と後とでくいちがって、つじつまが合わないこと。」です。
わかりやすく言えば、「矛盾する」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・今日かかる撞着に迷うものは、絶対他力を私していたものに過ぎない。(出典:西田幾多郎『絶対矛盾的自己同一』)
・私はこれまでも自分の行動のいくつかについては満足に説明することができませんでしたし、いろいろな矛盾撞着をさけることもできませんでした。(出典:ハメット/村上啓夫訳『デイン家の呪い』)
・ひとつもこの原則に撞着矛盾するものはない。(出典:幸田露伴『ねじくり博士』)
・この不可解しごくな転換は、まったく考えても、考えきれぬほど異様な撞着でございましょう。(出典:小栗虫太郎『白蟻』)
類語
・矛盾(むじゅん)
意味:二つの物事がくいちがっていて、つじつまが合わないこと。(出典:デジタル大辞泉)
・二律背反(にりつはいはん)
意味:哲学で、相互に矛盾する二つの命題(定立と反定立)が同等の妥当性をもって主張されること。(出典:デジタル大辞泉)
・相克(そうこく)
意味:対立・矛盾する二つのものが互いに相手に勝とうと争うこと。(出典:デジタル大辞泉)
・自家撞着(じかどうちゃく)
意味:言行や文章などが前と後とでくいちがうこと。(出典:四字熟語を知る辞典)